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65. 続・詐欺師たち

続・詐欺師たち
「建築関係の営業マンは、すごくシツコイみたいですよ。法務局に毎日通って、新たな登記があればすぐに営業に動くんです。彼らも必死ですからね」
あるとき、そんな話を聞いたことがありました。
「へえー。そんなに凄いんですか」
カオリはその時、まるで他人事のように聞いていました。土地登記のときは、円谷さんに建物を頼むことが決まっていたので、多少の営業電話がかかってきても気にしませんでした。言われてみれば、土地登記が終了した直後に営業の電話が何本かあったのです。そして先日も、建物登記が終わった途端に営業電話がかかってきました。それは別荘管理に関する電話でした。どうやら営業マンが毎日法務局に通っているのは本当のことみたいです。土地登記後は建築工事を狙い、建物登記後には別荘管理を狙う。そうして一度カモになってしまえば、以後は何だかんだと理由を付けてはお金を巻き上げられることになるのでしょう。

なお、カオリは「商売をしてはイケナイ」と言っているのではなくて、「商売なら多少のウソをついても許されるだろうと考えてはイケナイ」と言っていることを理解してください。手抜き工事をしたのにウソを付いて「ちゃんと工事をしましたよ」と主張したり、実際は問題のある土地なのにウソを付いて「滅多に出ない良い土地ですよ」と売ったりするのでは、「詐欺師と同じですよね?」と言いたいのです。ウソはいつかは必ずバレます。ウソがバレたら、また新たなウソを付いて言い逃れするような行為がまともな商売だというのなら、それは大きな間違いだと思います。あるいは、今まではそれで巧くいっていたのかも知れませんが、これから先の厳しい経済状況のもとでは客の方も、ものすごく勉強をしていますから、到底、誤魔化しきれるものではないのです。商売するなら正直に、トラブルがあっても真心で対応するという姿勢が大事だと思います。

ここで良い機会ですから、那須の詐欺師たちがどのような場面でツケいる隙を狙ってくるのか、もう一度整理しておきたいと思います。土地購入時から別荘利用時まで、5つの場面に分けて取り上げます。どの時期にどんな詐欺師たちがアタックしてくるのか、彼らのタイムスケジュールを知っておきましょう。実際に別荘建築に取り組んでみれば、彼らが次々と予定通りに現れてくることにきっと驚かれると思います。
  1. 土地購入時
    不動産屋は色々な土地を案内してくれますが、「ここなんかどうですか?」と紹介された土地でも、実は持ち主に売る気など全く無く、トラブルに巻き込まれることも多いようです。いい加減な詐欺的仲介に騙されないようにして下さい。また、土地はきちんと幅4メートル以上の道路に面しているのか、その道路は私道扱いなのか公道扱いなのか、私道だとしたら誰の所有になっているのか、位置指定道路になっているのか、水道は町営水道か井戸水か、管理は自治会が行なっているのか、傾斜地ではないか、もし傾斜地なら基礎工事に幾らかかるかなど、様々なチェック項目がありますので注意して下さい。那須では、この土地購入時に騙される人が非常に多いようです。カオリのお薦めは、信頼できると地元でウワサの不動産屋さん一軒のみにしぼって、根気強く土地探しを行なうことです。

  2. 土地所有時
    良い土地を手に入れたと思って安心してはいけません。土地の登記が終わるやいなや、法務局に毎日通っている営業マンに察知され、即日、営業電話がかかってきます。曰く、「もっといい土地を紹介しますよ」。大抵は不動産屋にとって都合の良い「土地」で、仲介手数料を2回分巻き上げられた挙句に、建築のできないゴミ土地を掴まされるケースが多いようです。一方の不動産屋は、そうやって手に入れた“使える土地”を転売して、さらに儲けるという仕組みになっています。また、「整地だけやらせてくれ」とか「浄化槽だけ入れさせてくれ」とか「土地を高く買いたい人がいるから測量させてくれ」とか「土地を高く売ってあげるから広告をさせてくれ」とか「水道だけ先に買ってくれ」などといった、様々なインチキ商法には決して騙されないようにして下さい。呼んでもいないのに自分達の方から言い寄ってくる輩はすべて怪しいと思った方が良いでしょう。
    また、“勝手に自治会”という商売方法もあります。これは那須で自治会のないまとまった土地区画に目を付けて、「オーナーさん達から依頼があったので現地見学会を開催します」と持ちかけ現地見学会を開催し、「このままではこの区画が荒れ放題になってしまいます。管理が必要ですよね?」と呼びかけ、自治会(という名の会社)を作ってしまうという方法です。実態は第三者による別荘地管理会社です。こうして出来た自治会(という名の会社)は、まず井戸を掘って水道を確保し、その水道権を土地所有者に販売します。こうして重要な水道というライフラインを自治会(という名の会社)に握られると、法外な値段の水道権利代や高い自治会費など、何かとお金ばかりかかる別荘地に変貌していくこととなります。

  3. 建築時
    「不動産屋が兼業で手配する建築工事」では利益の中抜きがひどく(40%くらい)、そのため手抜き工事が多くて詐欺同然と、地元で大変に評判が悪いようです。土地は不動産屋に、建築は地元の建築士か工務店にと、きちんと分けて自分で発注することで、安くて良い別荘を手に入れることが出来ます。また、そのような手配をしても「基礎工事だけ混ぜてくれ」とか「外溝工事だけやらせてくれ」とか「テラスだけやらせてくれ」と言ってしつこく迫ってくる関係者も多いようです。“信頼できない人間は一人たりとも建築工事には混ぜない”ことを心掛けた方が良いでしょう。
    また、「建築途中でもいいから売ってくれ。抵当権がついたら動かせなくなるから」と脅迫まがいのことを言って、業者が押しかけてくる場合もあります。滅茶苦茶な言い分ですのでハッキリとお断りするのと同時に、必要であれば警察を呼んだ方が良いでしょう。

  4. 建物登記時
    建物の登記が終わるやいなや、またしても法務局に毎日通っている営業マンに察知され、即日、営業電話がかかってきます。曰く、「別荘管理をやらせて下さい。お安くしておきますよ」。ここで営業トークに引っかかって別荘管理を任せたら、今までの警戒がすべて水の泡です。決して騙されないようにして下さい。必要のないものはキッパリと「必要ありません」とお断りしましょう。そのような人々に別荘の鍵を渡したら最後、どのようなことに利用されるか分かったものではありません。勝手に貸別荘として利用されたり、客を案内して営業に利用されたり。オーナーなどまるっきり無視で、「まるで自分たちの持ち物であるかのように好き放題に使われてしまった」という例を知っています。
    また、最近出てきた新たな手法として、オレオレ詐欺の別荘版なんていうのもあります。「いつから仕事に入りましょうか?」と唐突に電話がかかってきて「何の仕事ですか?」と聞くと、「那須の別荘の件で、ご家族から頼まれた件ですよ」などと言います。ここで「ああ、○○の件ね?」などと言ったら最後、「そうそう、それそれ。○○の件。ハンコが無いと仕事に入れないからこれから伺いますよ。あと、鍵がないと仕事にかかれないから預からせて下さい」などと言って、まんまとニセの契約書にハンコを押させて鍵まで手に入れるのです。

  5. 別荘利用時
    めでたく別荘建築も終わって楽しい別荘生活の始まり。でも油断は禁物です。詐欺師たちは別荘地やその周辺を日々歩き廻りカモを探しています。「屋根が傷んでいるようだから見てあげますよ」とか「シロアリ駆除の点検を無料でしてあげます」とか「テラスが腐ってるから作り直さないと危ない」とか「草刈を手伝ってあげますよ」とか言って、大きな声で挨拶をして笑顔で近づいてくる人にはくれぐれも気をつけて下さい。最初は小さなことを親切そうに行なって相手を信用させてから、徐々に大金を巻き上げるというのが、彼ら詐欺師たちの常套手段です。そして最後は必ず「私も商売ですから」と言って開き直り、堂々と法外な請求をしてきます。
    また、身内を装った窃盗集団も徘徊しているらしいので注意が必要です。手口としては別荘の周りを数人でウロウロして隣りの人などに、「この別荘のオーナーの身内なんですが、待ち合わせをしているのに入れなくて困っているんです」などと言って、隣りの人がオーナーから預かっている鍵を手に入れ、後は堂々と家財道具を運び出すというものです。

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